リテールメディアテックという市場の未来


リテールメディアとは

今回は今後の事業ロードマップのうち、リテールメディアテックについて触れてみます。

リテールメディアのテックは、リテールメディアに関するテクノロジーということです。
ファッションテックとかコマーステックのテックと同じです。
されそれでは、リテールメディアとは一体なんでしょうか。

業界によって呼び方は違いますが、主にデジタルマーケティング業界では製品を開発・製造して販売する企業を主にブランドもしくはメーカー、ブランド企業から製品を仕入れて販売する企業を主にリテールと呼びます。

また余談ですが、ブランド(メーカー)とリテールを総合してセラーと呼ぶケース、またリテールのことを流通と呼ぶケース、セラーのことをリテール(つまりブランド+流通)と呼ぶケースなどもあるので、若干紛らわしいですが、ここではリテールとはブランドから製品を仕入れて販売するビジネスのことを指すものとします。

こうした上記の意味でのリテール企業の代表例は、AmazonやWalmartなどです。
なお、楽天はモールですが、モールはリテールかどうかという点でいうと、「リテールメディア」という切り口で見る場合はモールもリテールと言えると思います。

なおこの記事では、前述したようにリテールメディアというのは大前提としてデジタルマーケティングの対象として、すなわち店舗も一部含まれますが主にリテール企業のECサイトのことだと考えて下さい。

retail-media-tech-1

エンゲージメントを高める接触点

さてリテールメディアというマーケット自体は、かなりの将来性があるのはほぼ間違いありません。

これには2つの側面があります。
一つは「そもそもリテールというのはメディアになりうる」というサイトの潜在的可能性としての側面と、「クッキー規制によってリテールメディアが今後広告のメインターゲットになる」という広告業界の規制による市場動向としての側面です。
つまり、クッキー規制があろうがなかろうがリテールメディアというのは自然発生し成長していったと思いますが、クッキー規制によってさらなる弾みというか加速がついているということです。

コマースにおけるCXを考える際に、その大きな要素としてメディアという存在が必要です。
大概のケースにおいては、商品認知、共感などのステップなしには購買には至りません。
これらを総合してエンゲージメントと呼ぶこともあります。
ではブランドやリテールを手掛ける企業はどういった接触点を活用してエンゲージメントを高めていくのでしょうか。

Googleなどのインターネット検索でのリスティング広告、ニュースサイトなどにおけるリターゲティング広告、メールマガジン、会員サイトやモバイルアプリなどさまざまなメディアがありますが、これまであまり活用されておらず、かつ今後大きな活用が見込まれるものの一つがリテールメディアということです。

ここで誤解のないように説明すると、エンゲージメントを高めるという目的のためだけであれば、リテールに限らずブランドメディアも十分有用な接触点となります。
ただブランドメディアは「購買へのプロセスとしての有用なエンゲージメントのポイント」ではありますが、そこにメディアとしての市場が発生しない、というのがリテールメディアとの大きな違いです。

リテールメディアというのは、各ブランド企業の商品を横並びで扱っているので、ブランド企業としてはそこで自社の製品のエンゲージメントを高めたいと考えています。
しかもリテールメディアに訪れているユーザーは購買について前向きに考えている可能性が高いので、一般的なインターネット検索でのリスティング広告などより、はるかに購買に近いタイミングでの露出が可能となります。
ECではない店舗でのケースを考えてみるとわかりやすいですが、リテール企業の店舗には各メーカーの販売員が応援で商品説明や接客に来ているケースはよくあります。

このようにブランド企業はリテールにおいて存在感を高めるというのが、エンゲージメントを上げていくという取り組みにおいて非常に重要な上、その場合リテールの場というのはブランドにとって競争の場でもあるため、そこには市場が生まれるということです。

ECサイト内のクエリを活用した検索連動型広告の可能性

リテールメディアテックのマネタイズするパターンはたくさん考えられますが、まずその嚆矢となるのがサイト内リスティング広告かと思います。

ブランド企業からすると、例えばGoogleなどのインターネット検索においてリスティング広告を打つことも有用ですが、リテールのECサイト内というのはまさにエンゲージメントのラストステップといってもいい場面なので、広告を打つ効果としては絶好のポイントになり得ます。

当社は主力事業がECサイト内検索エンジンなので、そもそもECサイト内のクエリを扱うことに関してはお手の物です。
これをまずはリスティング広告という形でマネタイズしていくことが、リテールメディアテックの第一歩になるかと思います。

retail-media-tech-2

実際、AmazonやWalmartはサイト内のリスティング広告で莫大な収益を上げ始めていますが、こうしたトレンドは日本でも今後ポストクッキーの流れとともに一気に加速するのではないでしょうか。

━━━━━━━━━━━
▼Amazon
GoogleやFacebookから広告予算がシフトしているAmazon広告。多くの小売事業者が利用する5つの理由
https://netshop.impress.co.jp/node/8840
引用元:ネットショップ担当者フォーラム 2021年7月1日配信

▼Walmart
ウォルマート、広告業界でも存在感…広告ビジネスの売上高が前年比2倍に
https://www.businessinsider.jp/post-240584
引用元:BUSINESS INSIDER JAPAN 2021年8月27日配信
━━━━━━━━━━━

またその先には、リスティング広告だけではなく、クチコミデータを活用したリテールメディアテックの展開もありますが、それについてはまた改めて解説したいと思います。

メルマガ登録

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ZETA CXシリーズ一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
EC商品検索・サイト内検索エンジン『 ZETA SEARCH 』
レビュー・口コミ・Q&Aエンジン『 ZETA VOICE 』
レコメンドエンジン『 ZETA RECOMMEND 』
OMO・DXソリューション『 ZETA CLICK 』
広告最適化エンジン『 ZETA AD 』
予測・パーソナライズソリューション『 ZETA DMP 』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之

【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

– 前の記事 –
2022年6月期第2四半期決算説明会資料について