決算発表と通期業績予想について
11月12日に、サイジニアとして2022年6月期第1四半期の連結決算発表と、2022年6月期の通期業績予想を発表しました。
━━━━━━━━━━━
▼リンク
2022年6月期第1四半期 決算説明及び通期業績予想について ※PDFファイル
━━━━━━━━━━━
3月31日に株式交換契約について発表し、7月1日の株式交換の効力発生日、8月31日の企業結合日を経て、初めて対外的にサイジニアと連結する形でのZETAの財務内容を公表する機会となりました。
なお企業結合日とは、買収企業と被買収企業の事業が結合された日のことです。
サイジニアとしては、例年は半期と通期でのみ決算説明資料を発表するのですが、今回はZETAの連結に伴う会計上の処理の部分について詳しく説明するため、第1四半期において説明資料を発表しています。
その決算説明資料の読み方について説明をしてみたいと思います。
上記のリンクにある資料と見比べながら読んでいただければ幸いです。
今回発表した決算説明及び通期業績予想資料(以下、公表資料と呼びます)は、主に3つのパートから構成されています。
第1部が2022年6月期第1四半期決算の内容について、第2部がZETAの取得について、第3部が2022年6月期通期業績予想についてです。
まず、第1四半期決算の内容については、これは公表されている資料のままで、それほどわかりにくい面はないかと思います。
第1四半期の決算は、企業結合日が8月31日であるため、BS(貸借対照表)はサイジニア、デクワス、ZETAの3社が連結されたものですが、PL(損益計算書)はサイジニア、デクワスの2社のみ連結したものです。
損益に関しては、売上は前年同期比31%アップ、営業利益は66百万円の赤字から6百万円の赤字へと、60百万円の改善です。
公表資料の7ページ目にあるように、ZETA取得にかかる一時的な費用などがおよそ20百万円計上されていますので、サイジニアとデクワスの2社による第1四半期の事業による営業利益はおよそ14百万円ということになります。
また、2022年6月期については、第2四半期からZETAの損益も連結されることになります。
具体的には、第2四半期においてはサイジニアとデクワスの10-12月の3ヶ月とZETAの9-11月の3ヶ月が連結されます。
ちなみに、ZETAの2022年5月期の第1四半期、つまり6-8月の3ヶ月は今後も連結されません。
まとめると、サイジニアの2022年6月期の連結決算は、サイジニアとデクワスは2021年7月から2022年6月の12ヶ月、ZETAは2021年9月から2022年5月の9ヶ月が連結されるということです。
次にZETAの取得についてですが、このパートが今回の公表資料において、ある意味最もわかりにくいパートかと思います。
今回のM&Aは、株式交換という手法によって行われました。
現金での取得の場合に比べて、株式交換という手法はのれんの算定の方法が複雑になります。
のれんというのはそもそも、ある企業を買収した場合に、その買収額と被買収企業の純資産の差額のことを意味します。
例えば純資産が1億円であれば、1億円で買収すれば、のれんはありません。
ちなみに純資産より安い金額で買収した場合、その差額は負ののれんと呼ばれます。
例えば純資産が1億円の企業を、2億円で買収した場合、差額の1億円の価値を何らか見出しているということになります。
その価値が何なのかは、これはもうケースバイケースなので一概には言えませんが、いずれにしてもその純資産に上積みした企業の付加価値のことを、のれんと呼ぶということです。
この付加価値は、その時点で純資産には計上されていないが企業価値とみなせるものもあれば、将来その企業が成長していくことで得られるであろう将来価値などがあります。
現金買収の場合には、契約成立時点で買収金額が決定しますから、その時点でののれんも決定します。
一方で株式交換の場合、契約成立時点と企業結合日の株価は同じであるとは限りません。
取得した側でいうと、企業結合日の時点での株価を元に、買収した企業の評価額が決定しますから、のれんの金額が当初の想定から変化する可能性があるということになります。
今回のZETAのケースでいえば、3月31日のサイジニアの株価の終値は1074円でした。
株式交換のため1,051,125株を発行していますので、3月31日の評価額はおよそ1128百万円ということになります。
企業結合日である8月31日のZETAの純資産はおよそ389百万円であるため、8月31日の株価の終値が1074円であったら、その差額のおよそ740百万円がのれんということになります。
実際の8月31日の株価の終値は2240円であったため、のれんはおよそ1972百万円ということになりましたが、これは株式交換契約の発表時から1200百万円以上多額ののれんとなっています。
のれんというのは、その企業の純資産に上積みした付加価値であるため、その適正な範囲を超えた部分については、今回のような一時減損という形で償却し、残った適正なのれんを毎年定期償却していくということです。
その適正な範囲、というのをどうやって決めるのかは、様々な面から慎重に検討をして決定されます。
今回は805百万円を適正なのれんとし、1972百万円との差額である1167百万円を一時減損し、805百万円を10年に渡って償却していく予定、というのが公表資料の内容です。
またこの10年という期間も、被買収企業の事業の存続性によって、慎重に検討した上で決定されます。
今回のケースでいえば、ZETAのビジネスは今後10年間は健全に継続すると想定している、ということです。
2022年6月期においては、企業結合日が8月31日であるため、すなわち連結する期間が9ヶ月のみであるため、60百万のみが定期償却の金額となっています。
のれんについてまとめると、現金買収の場合には、企業価値評価(一般的にデューディリジェンスと呼ばれます)時点で買収金額が決定するために、のれんもその時点で判明しているが、株式交換の場合には、企業価値評価時点と実際の企業結合日の間に株価が変動しうるため、その変動の多寡によって取得に際して発生する一時減損という処理が必要になる可能性がある、ということです。
また公表資料の12ページにあるように、のれんの償却は、一時減損も定期償却も会計上の処理でキャッシュフローには影響しません。
一概にはいえませんが、M&Aを発表してそれが良いものと思われれば株価は上がるでしょうし、良いものと思われなければ株価は変化しない、もしくは下がると思われるので、M&Aの内容が良いと株価上昇によって増えたのれんという付加価値の一部を一時減損とするという会計処理になりやすい、という傾向はありそうです。
最後に、2022年6月期の通期業績予想についてです。
これも公表資料第1部の2022年6月期第1四半期決算発表同様、発表された内容そのままで、それほどわかりにくい部分はないかと思います。
売上高が2400百万円、営業利益が270百万円、これはZETAの9ヶ月分のPLが連結されたものです。
ちなみにのれんの定期償却の60百万円は営業内費用となります。
一方で一時減損の1167百万円は特別損失となります。
通期業績については、売上高、営業利益ともに過去最高となる予想です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ZETA CX シリーズ一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
EC商品検索・サイト内検索エンジン『 ZETA SEARCH 』
レビュー・口コミ・Q&Aエンジン『 ZETA VOICE 』
レコメンドエンジン『 ZETA RECOMMEND 』
OMO・DXソリューション『 ZETA CLICK 』
広告最適化エンジン『 ZETA AD 』
予測・パーソナライズソリューション『 ZETA DMP 』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之
【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
– 前の記事 –
活気が戻りつつあるマーケティングイベントと期待されるOMO展開