マーケットドリブンというアプローチ
マーケット予測に基づいた予算編成
今サイジニア、デクワス、ZETAの来期の予算編成真っ最中です。
予算編成をするにあたって必要なのはもちろん、受注予測とそれに連動する原価の予測、あと販管費の計画、また連結仕訳の把握です。
この中で一番重要な要素は、当然ながら受注予測であるのは言うまでもありません。
さて受注の予測を立てる場合、
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●マーケット(市場規模)を予測し、そこから取れるシェアを考える
●個々のスタッフが達成しうる予算を予測し、それを積み上げる
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という2つのアプローチがありますが、これは私の持論ですが、使うべきアプローチは前者です。
後者はむしろ、前者で予測した受注に対して、それを達成する人員(リソース)があるかという、手段の分析という側面ではないでしょうか。
ちなみに前者のアプローチでいうマーケットですが、私は3種類に分けられるのではないかと考えています。
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松 完全に新規で発生する市場
竹 どこか違う分野から持ってくる市場
梅 競合同士でゼロサムで奪い合う市場
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松は例えば、その事業が展開されていなかったらみんなタンス預金とかに回していたお金を引っ張り出してくるようなビジネスです。
これは完全な新規市場の創造なので、理想のアプローチであると言えます(公序良俗に反するとかでない限りは)。
竹は、その市場自体は新規に創出されるが、代わりにどこかの市場が減っているようなケースです。
可処分時間を狙った事業などはこのパターンが多いのではないでしょうか。
そして事業計画を立てるときに一番多いのが梅のパターンです。
市場自体はあるがままで、それをいかに他社より効率よく奪うか、というアプローチです。
マーケットドリブンとテクノロジードリブン
さてマーケットに基づいた予算編成をするというのは、言ってみればクライアントの需要を根拠にした予算編成をするということです。
これを私は標題にあるように「マーケットドリブン」と呼んでいます。
ところが不思議なことに、ITベンチャー、特にスタートアップにおいては、「こんな素晴らしいテクノロジーがあれば売上が上がるに違いない」という、いわばテクノロジードリブンとも言えるような予算編成のアプローチが多く見られます。
私もZETA創業当時はそういう面があったので、誰しも通る道なのかもしれません。
重要なのは、「そのテクノロジーを用いてどういうマーケットが生まれて」というワンステップを挟むことだと思います。
テクノロジーは予算編成というトピックにおいてはマーケットの需要の根拠となる手段に過ぎないということです。
マーケットドリブンというアプローチに基づいて予算編成をする場合、クライアントにどういう需要があるかと、また、他社に対してどのくらい参入障壁を築くことができるかが重要です。
この参入障壁の構築は、テクノロジードリブンで良いというか、テクノロジードリブンであることがIT企業の頑張りどころではないかと思います。
MAツールの翳り
市場予測はマーケットドリブン、参入障壁はテクノロジードリブン、というのは良いとして、問題はその予測する対象の変化が激しいので、予算編成における市場予測は年間のイベントのなかで最重要なパートの一つであると言えます。
最近で言うと、いわゆるMA(マーケティングオートメーション)が少し翳りが見えてきているように感じています。
かつてのWeb接客も同じですが、MAというのは参入障壁が構築しづらい分野なので、結構な速度で陳腐化してしまう側面があるということです。
一方で参入障壁が構築しづらいということは、参入しやすいとも言えるので、事業基盤があまりしっかり確立できていなくてもチャレンジすることが可能とも言えます。
そうした分野というのは、往々にして宣伝合戦になりやすいというのは、容易に予測できる現象です。
そうなるとマーケティング費用をじゃぶじゃぶ使うか、セールス人員をじゃぶじゃぶ増やすことが受注の増加に繋がりますが、これは一旦始めてしまうと、やめるのがなかなか困難な状況に陥りやすいかと思います。
一方で、そうしたマーケティング費用の増大もしくは人件費の増大でサービスを拡大するというのは、デジタルマーケティング業界のベンダーには全く向かない手法です。
なんとなれば、デジタルマーケティング業界のベンダーというのは、クライアントのマーケティングの効率を上げるための商材を提供しているはずなので、そのベンダー自身がそんな非効率な手法で事業拡大を目論んでいるようでは、クライアントに良いソリューションを提供することはできない可能性が高い、いわば医者の不養生とでもいうような状況ではないでしょうか。
デジタルマーケティング業界におけるITベンダーのあるべき姿
マーケットドリブンすなわち市場を予測しそこからどのくらいのシェアを取れるか、というアプローチで予算を編成し、また、テクノロジードリブンで他社に対する参入障壁を構築し、そして受注に連動する変動費というものを極力抑えることこそが、デジタルマーケティング業界におけるITベンダーもしくはスタートアップのあるべき姿ではないかと思います。
そしてもちろんサイジニア、デクワス、そしてZETAではそのようなアプローチに基づいた予算編成に取り組んでいます。
マーケティングオートメーション業界が飽和しつつあるのは、チャンスである可能性が高いでしょう。
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【著者情報】
ZETA株式会社
代表取締役社長 山崎 徳之
【連載紹介】
[gihyo.jp]エンジニアと経営のクロスオーバー
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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