オムニチャネルと O2O
キーワードバブルと本格活用開始に見られるタイムラグ
ここ最近、 O2O ソリューションの発表が立て続けにありました。
O2O といえば2011-2012年頃に一旦ブームが起こって、その後ビッグデータやオムニチャネルに取って代わられた感じですが、本格的に活用されるのはだいたいブームの3-4年後ということが多いので、 O2O もしかりという感じです。
話は逸れますが、そもそもなんでブームになっているときと実際に活用されるタイミングに数年のズレがあるのでしょうか?
それにはいくつかの理由があります。
まずは日本と海外、とくにアメリカとの差です。
だいたいアメリカで流行ったものは3-4年後に日本で流行ることが多いものです。
キーワードというのはビジネスそのものと違ってすぐに輸入して流行らせることができるので、アメリカで流行っている→キーワードが輸入される→実態が追いつくのは数年後、ということが起こるわけです。
それを活用したのがいわゆるタイムマシン経営というものです。
すぐにコピーしてスタートすれば、数年先んじられるというものですが、逆に言えば数年は耐える覚悟が必要ということでもあります。
他にも理由があります。
キーワードだけが先行してバブル的にブームになっている、いわゆるバズワードの期間は「取り組むだけで話題になる」期間です。
例えば最近話題の人工知能についてニュースを見てみると、そのほとんどが「取り組みを開始」といったもので、成果についてのニュースはほとんどありません。
AlphaGoや、病気の原因を発見したなど、成果が伴ったときにはそれこそかなりのビッグニュースとなります。
バズワードとして期間はずっとは続かないので、1-2年もしてくると「ところで成果は」という疑問が出てくるのは当然です。
取り組みが評価される間はいわばモラトリアムですが、成果が評価対象になると、ブームに乗っただけのプレイヤーは消えていく運命にあります。
それはつまり、最初の1-2年の間はプレイヤーが玉石混交ということです。
しかもそういうときは、成果が出せないプレイヤーほど声が大きくなったりします。
ですので、ブームが落ち着いて成果が評価される段階になってようやく、きちんと取り組んでいるプレイヤーが評価され、腰を据えた取り組みができるようになってくることが多いのです。
検索がEC・デジタルマーケティングに活用されない理由
それはさておき、 O2O もようやく本格的な活用期に入りつつあるというのは、良いことです。
ECというかデジタルマーケティングが、単なるいちツールではなく、メインの役割の一つとして認知され活用されるという証左です。
ただ、その後これもまたバズワードになったオムニチャネルとかぶる概念であるため、最近はこの2つは一つにくくられることも増えてきました。
どちらかというと O2O はマーケティング・送客メイン、オムニチャネルはUX向上・タッチポイントメインという感じではありますが、マーケティングにおけるタッチポイントの活用という意味ではそこに明確な違いはありません。
ECは O2O では送客側、オムニチャネルでは受け皿として使われますが、そのどちらにおいても検索というものは重要です。
それは「消費行動というものは消費者が商品を探すという行為である」という原則がある以上、当然のことです。
実際には「消費行動というものは消費者が商品を探し、お金を払い、商品を受取る行為である」のほうがより正確ですが、マーケティングが活用されるのは「商品を探す」という部分においてです。
ただ、まだまだ検索というものがEC・デジタルマーケティングにおいて活用されていないケースが多いのは事実です。
その最大の理由の一つが、一般的な認識として「検索=キーワード検索」という誤解が広まっていることが挙げられます。
もちろんキーワードというのは検索における最も重要な条件の一つです。
ただインターネット検索とちがい、ECにおいてはキーワードとそれ以外の検索条件の重要さに差がない、場合によってはキーワード以外の検索条件のほうが重要なケースも多いというのが本当のところです。
もちろんインターネット検索においても、例えばGoogleであれば対象が「すべて」「ニュース」「ショッピング」と分かれていたりとか、検索期間の絞り込み、言語の絞り込みなど、キーワード以外の検索条件もありますが、それでもやはりインターネット検索においてはキーワードがその検索条件のほとんど全てであるといえます。
ECは注目されていてもまだまだマイナーなものですから、検索=キーワード検索という誤解が広がるのは、まだやむを得ない部分はあります。
それだけにそこはライバルに差をつける大きな伸びしろでもあるのですが。
O2O ブームが再燃している理由
具体的な例を挙げて見てみましょう。
ECにおける検索の場合、キーワードだけではなく「価格帯」「発売日」「評価」「色」「サイズ」など商品ごとに特有の検索項目があります。
そしてキーワード以外の検索項目を使う場合、それはそのままソートすなわち並べ替え条件としても使われることが多いのです。
キーワードの場合、基本はキーワードのマッチ度がソート条件ですが、ECにおいては先程検索条件に出てきたような価格帯、発売日、評価などはそのままソート条件にも活用できます。
また物販ではないですが、旅行、レストラン予約など、手配系のECの場合はさらにそれが顕著で、「場所」「日時」という絶対的に重要な検索条件が登場します。
むしろそうしたケースではキーワードはあまり使われなくなります。
O2O やオムニチャネルにおいては、位置情報が重要な一つの情報となってくるため、検索が重要というのは本来は自然な流れなのです。
また、オンラインとオフラインにまたがる消費者心理の推察において、先程挙げたような検索条件というのは大変有用です。
場合によっては購買履歴より重要だと言えるでしょう。
話を戻すと、なぜ最近 O2O のブームが再燃しているかといえば、それは私が思うに「位置情報をデジタルマーケティングにおいて本格的に活用する時期にきた」というのがその最大の理由です。
もちろんその原因の一つはスマートフォンの普及ではあるのですが、店舗がECというものを無視できなくなってきたというのもまた大きな理由の一つです。
ここからは O2O そしてオムニチャネルの活用というのは本格化していくのはほぼ確実です。
その中で、位置情報含めどう検索条件という形で表される消費者心理を活用するかが、鍵を握ってくるといえるでしょう。
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【著者情報】
株式会社ゼロスタート
代表取締役社長 山崎 徳之
【連載紹介】
[gihyo.jp]人工知能で明日のビジネスは変わるのか?
[Biz/Zine]テクノロジービジネスの幻想とリアル
[ECZine]人工知能×ECことはじめ
[ECのミカタ]ECの役割
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